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丸山薫賞/平成16年度

平成16年
第11回
丸山薫賞

選考

 平成16年9月9日、豊橋市役所において第11回丸山薫賞の選考が行われ、対象詩集255点に対し、慎重厳正に論議の結果、選考委員全員の一致をもって、槇 さわ子さんの詩集『祝祭』 ( ふらんす堂 刊 ) に決定しました。

選考経緯

 次の諸詩集を、最終候補として選び、検討を重ねた。いずれも秀れた内容で、甲乙つけがたい詩集であった。
  稲垣瑞雄詩集『地の魚 星の魚』は、闘病生活を通して、幼少時から親しんできた魚を自らの体内に棲まわせ、幻の魚を山頂に幻視したり、魚を通して自らの体験を語らせている。
 崔龍源詩集『遊行』は、身体の中を流れる日本人の血が<半島の恨や怒り>、日本に住みながら<異邦人>という民族のしがらみの中での詩人の悲しみが心に訴えてくる作品。春の中にいて滅びゆく秋を思う「エレジー」に見る詩人の表現は、若々しく新鮮で、哀切である。
 槇さわ子詩集『祝祭』は、日常生活の中で今は亡き母や亡夫などの思慕の情が、豊かな感性と鋭い知性のきらめきで、巧みに形象化されており、読む者がとても豊かな気持ちになることが評価された。
  以上、議論を尽くした結果、槇さわ子詩集『祝祭』を受賞作に選んだ。

受賞者紹介

 槇さわ子さんは昭和14年、東京都生まれ。福島県立梁川高等学校卒。現在、福島県福島市に在住。
  中学生の頃より詩を書き始める。昭和43年、海霧作家同人会に所属。同年、第一詩集『半熟卵の月』を出版。昭和57年、詩集『般若』を出版し、福島県文学賞を受賞。同年、芸風書院より「日本現代女流詩人叢書」の第60集として『槇さわ子詩集』を出版する。平成2年、詩集『神さまの木』を出版。平成3年より 6年間にわたり福島県文学賞審査委員を務める。平成11年、詩集『月夜のアトリヱ』により福島民報出版文化賞を受賞。     
槇 さわ子さん 

受賞の感想

 このたび丸山薫賞という高名な詩人の名を冠した賞をいただきましたことを、心から嬉しく光栄なことと思っております。中学生のころから詩を書いておりまして、丸山薫は朔太郎、三好達治とともに、憧れの詩人でした。

受賞詩集について

 受賞詩集について選考委員を代表して菊田守さんは次のように評しました。
 受賞詩集『祝祭』は、日常生活の中で、眠っていても街を歩いても身体を横たえても常に母や妹や亡夫への思慕の心情を、豊かな感性をもって、明るく優しい形象や風景で表現している。
 代表作となった「祝祭」は、シャガール展を観た心象風景を、美しい言葉で明るく楽しく、そして切ない余韻を与える作品に仕上げている。作品「川の乳房」は、川の流れの中に母の手をみ、波間に母のかたちのよい乳房をみ、数えきれない女たちの苦しみ歓び愛し愛された乳房を黄泉の川にみるという。作品「柳町」は、肉親の繋がりを町を歩きながら感じる詩。妹の気配を五感で感じ、長い間の確執や怨嗟とは別の、妹の声をきく。日常生活の心のゆれを見事に描いている。
  作品「葡萄酒のひと瓶」は、棚の硝子の空瓶に亡き夫の魂が宿っている気がして、ある晩、葡萄酒のひと瓶のように横たわる。そして、<夫と過した歳月が醸されて/ 私の生がまろやかな/深いものとなりますように>と書かれている。
  ここには、生きる私たちの日常生活を支えている死者たちの支えや、死者たちとの魂の交流が巧みに形象化されていて、読者がとても豊かな気持ちになる。素敵な魅力を有した詩集で、読者のひとりとしてとても嬉しい。

受賞詩集についての思い
(受賞者 槇さわ子さんより)

 人が生きてゆく上での行為の中には、善いこともあり、必ずしもそうとばかりは言えないこともあります。日々の営為とは、その全てを受け止めてゆくことだろうと思います。   
 どこからか大きな深い目差しが、それを見ているのではないか。そんな想いを抱きながら、この詩篇をつづりました。

表彰式

 丸山薫の命日にあたる10月21日、ホテルアソシア豊橋で行います。

選考委員

 伊藤桂一
 杉山平一
 新川和江
 菊田守
 冨長覚梁