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丸山薫賞/平成19年度丸山薫賞決まる!
平成19年
第14回
丸山薫賞
選考  平成19年9月11日、豊橋市役所会議室において選考委員全員の出席のもと、第14回丸山薫賞の選考が行われました。対象詩集264冊をベースに個々の詩集を通して詩の可能性が論じられ、長時間にわたる議論の結果、新藤凉子さんの詩集『薔薇色のカモメ』(思潮社 刊)に決定しました。
選考経過  264冊の対象詩集から、先ず各選考委員が前もって各々3冊以内を推薦し、10冊が第2次候補として選ばれました。10冊を個別に検討し、次の4冊が最終候補となりました。
 『薔薇色のカモメ』新藤凉子、『マー・ガンガー』宮内喜美子、『水の充実』 山本十四尾、『夢化け』こたき こなみ (詩集名 五十音順)
 『薔薇色のカモメ』には、枯渇しない豊かな抒情と表現の妙がある。『マーガンガー』では、死が個を超えた存在となっており、また、民族を超えた生き方を示唆する詩集として読者を引き寄せる力がある。『水の充実』は、細やかな視点と大きな視野の融合する詩集で、現代の問題意識が明確に提示されている。インパクトがあり、力量ある詩人の仕事となっている。『夢化け』は、複雑で矛盾した社会情勢を多面的に捉えており、ユーモアの中に批評がある。事物や猫への愛情表現が明るく、幅のある詩集である。
 話し合いも白熱の後、1冊を決めるために更に検討が続き、選考委員全員の合意で、『薔薇色のカモメ』を受賞詩集と決定した。
 『薔薇色のカモメ』は「残照」「海光」「唱歌」の3部からなる詩集である。「残照」には異国の情趣漂う詩編が集められており、穏やかな言葉のリズムから生まれるイメージの奥に、過ぎ行く時間が伏流水のように流れている。「海光」には、先達の詩人たちと夫への追悼の詩が収められ、「唱歌」にもまた死が多く扱われているが、じめじめした涙の詩ではない。死と向き合い、死を掬い取る作者の姿がうかがえる。長い間詩を書き続けている新藤氏の言葉の豊かさ、潤沢な抒情、鋭敏な感覚、ベテランでありながら素朴さを失わない詩編が評価された。        (なんば・みちこ選考委員 記)
受賞者紹介  新藤さんは、昭和7年、宮崎県生まれ。昭和27年、東宝舞台(株)入社と同時に劇団「東童」に入団。その後、舞台衣装研究室を設立した。また、昭和37年、早稲田大学聴講生として学んだ後に渡欧。昭和39年、原作の「めひょう」がフジテレビの連続ドラマで放映され、脚本、企画などにかかわる。平成2年、熱海市に移り住み、静岡県家庭裁判所調停委員を務め、現在参与。詩歴は、昭和29年、三木卓氏らと同人の詩誌『氾』に加わり、昭和37年には、草野心平の推挙により詩誌『歴程』に加わる。昭和61年、詩集『薔薇ふみ』で高見順賞受賞。詩集は他に『薔薇歌』『ひかりの薔薇』、高橋順子氏との連詩集『地球一周航海ものがたり』など。日本現代詩人会、日本文芸家協会所属。 受賞者
受賞の感想  新藤さんは「熱海の、海しか見えないところで二十年を過ごし、その間に書いた詩を纏めたものが『薔薇色のカモメ』でした。この部屋から見える海は、いのち終えたものみな、蘇ってくると信じたくなるほど美しいのです。丸山薫先生は「わが詩は火と水のかげより生まれぬ」といわれたそうですが、私もそのかげで、いのりのように書きました。それを選んでくださった諸先生がたに、深く感謝をいたします。」と喜びを述べられました。
贈呈式  平成19年10月19日、豊橋市内のホテルで行われ、同賞委員をはじめ、日本現代詩人会理事長の山田隆昭さんら約150人が出席、コーラスや群読などで祝福しました。