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丸山薫賞/平成20年度丸山薫賞決まる!
平成20年
第15回
丸山薫賞
選考   平成20年9月2日、豊橋市役所会議室において選考委員全員の出席のもと、第15回丸山薫賞の選考が行われ、議論の結果、新川和江さんの詩集『記憶する水』(思潮社 刊)に決定しました。
選考経過 「現代にあって 生の始源をテーマに」
  丸山薫賞は第15回を迎えた。この15年は長く、そして重い。日本の詩のはるかな地平線を切り拓くブルドーザーの役目を果たしてきたといっても過言ではない。選ばれた詩集(詩人)も、また選ぶ役目の選考委員も、透徹した詩的精神の持続が必要とされる。
  今回は全国から応募、推薦を含めて231冊の詩集が第一次候補として記録された。現在、活躍中の詩人の名も数多く見られ、まさに日本の詩の一大パ ノラマとでもいうべき壮大さである。伊藤桂一、菊田守、なんば・みちこ、秋谷豊の4名、各々が2冊程を推薦。次の5冊が最終候補として挙げられた。
『記憶する水』新川和江、『地球の庭先で』松尾静明、『ナナカマドの歌』田中郁子、『ホッチキス』細見和之、『夜の鳥たち』黒田佳子(詩集名 五十音順)
  2時間以上にわたり、静かだが、白熱した論議が続けられた。
  松尾静明さん、人間の営みの風景や自然に心の形を映し出す。田中郁子さん、自然的空間のひろがりを、内面の抒情として深める。細見和之さん、文明社会の中の人間批評の試み。思想が「見るもの」「感じられるもの」として表現されるとよい。黒田佳子さん、現実を見る目の細密さ。父・井上靖氏のもっともいいところを受け継いでいる。詩人の自由な想像力に期待したい。
  最終的に松尾静明『地球の庭先で』、新川和江『記憶する水』の2冊を対象に検討を重ねた結果、第15回丸山薫賞は新川和江さんの『記憶する水』に決定した。
  『記憶する水』は、全詩集刊行後の新川さんの詩の新しい展開を示すものであり、日常のなかの見慣れた事物、風景、存在に言葉の生命を与える、想像空間の楽しさがある。「水には記憶する能力がある」というイメージなど、万物にとっての始源のテーマを暗示する。
(選考委員  秋谷 豊 記)
受賞者紹介   新川さんは、昭和4年、茨城県生まれ。旧制高女時代より、西條八十氏に師事。茨城県立結城高等女学校を昭和21年卒業。新川淳氏と結婚。東京に移住後、学習雑誌、少女雑誌などに詩や小説を執筆。「プレイアド」「地球」など同人詩誌に参加し、詩の研鑽につとめる。現代詩人賞その他を受賞。昭和58年より十年間、吉原幸子氏と共に季刊詩誌「現代詩ラ・メール」を創刊・発行。女性詩人の発表の場づくりをし、すぐれた新人たちを世に送り出す。茨城県結城市名誉市民、同市立ゆうき図書館名誉館長。日本現代詩人会元会長。主要詩集『土へのオード13』『ひきわり麦抄』『はたはたと頁がめくれ…』など著書多数。 受賞者
受賞の感想   新川和江さんは「若き日から愛読し、尊敬申し上げていた詩人丸山薫先生の名を冠した賞を頂くことが出来まして、六十年書き続けてきてよかったと、感慨無量でございます。」と喜びを述べられました。
贈呈式   平成20年10月21日、豊橋市内のホテルで行われ、同賞委員をはじめ、日本現代詩人会理事長の山田隆昭さんら約150人が出席、コーラスや群読 などで祝福しました。