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30歳で癌になった同級生がつくった豊橋のクラフトビール屋(長坂 尚登)

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30歳で癌になった同級生がつくった豊橋のクラフトビール屋(長坂 尚登)

クラフトビールの写真「子どもを育てるなら豊橋だなって」彼は言った。彼とは、水上ビルにあるクラフトビール屋のオーナー、大川真之介さん。

「子どもが小学生になるくらいまでにお店始めたいな、豊橋にクラフトビールの風が来るのを待とうと思ったけど、全然その気配がなくて。だったらいつ始めても同じかなって。次の春が来て4周年」

彼と同じ歳ということもあって、僕はこのお店に親近感を抱いている。ある日、そんな彼のお店に「しばらく休業します」という紙が貼られた。

「お店を始めて1年半のときかな。医者から聞いて、はじめは他人のことかと。すぐその日に手術して。『明日からどうしよう』って、お店あるし。週末にも予約あったし」

僕が、彼が癌だと知ったのは、その少し後のことだった。

「1回死んだ感じ。でも『ラッキーかも』って。子どもが病気になると、親が思うのは『早く治ってほしい』じゃないんだよね。『代わってあげたい』難病の子とかいるけど、もしかして僕はその親が願っても叶えられなかったことを叶えた。子どもの代わりに僕が病気になったんじゃないかって」

そんな彼の考え方に、僕は驚いた。

「体調? 今は全然大丈夫。次はどのビールにする?」

僕はいつもここに、ビールと会話を楽しみに来ている。

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