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『川の見えない橋は』(朝岡 みゆき)

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『川のみえない橋は』(朝岡 みゆき)

川の見えない橋の写真

川は見えないのに、ビルの間に橋が架けてある-。そんな不思議なビル群が街中にある。水路(川)を、長さ800m にわたって塞ぎ、その上に15 棟のビルが建つ、通称「水上ビル」だ。

1960 年代の半ば、高度成長期にできたこのビルには、戦後の青空市場が起源の商店街が入居した。現在は、花火や駄菓子の老舗問屋や新しい店が混在し深い味わいを出している。レトロモダンなタイルの外壁や、ビルの下に川が流れているという特殊性も魅力的だ。そして、築50 年を過ぎ老朽化が心配される中、商店街は「20 年生き延びる宣言!」を掲げ、このビルをできる限り残すことを決めている。

一方で、このビルの前には、「まちなか図書館(仮称)」が入居する再開発ビルの計画がある。
現代的なビルと異色の古いビル。そのコントラストと共存は、街の表情を豊かにし、訪れる人の郷愁をきっと誘う。

橋の欄干を、猫がゆうゆうと乗り越えていく。もしかしたら、今は川の見えないこの橋は、水上ビルの「残り20 年」とその先をつなぐ懸け橋となるのかもしれない。

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