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ひとり親を乗り切るすべを探す中で

先月に引き続き、NPO法人グリーンパパプロジェクト代表理事)吉田大樹さんが執筆されます。

(第2回/全2回)

 

【ひとり親を乗り切るすべを探す中で】
 ひとり親になる前から、普段から子どもたちと遊んだり、料理などの家事に対してもできる限り取り組んでいたので、日常生活を送る中で「育児や家事ができなくて悩む」ということがなかったのは幸運なことでした。2006年に娘が生まれた際には1か月半の間、育児休暇を取得するなど、常に自分ができることにトライしていく姿勢を持っていたことは大きなアドバンテージだったと思います。

 ただ、ここは多くのワンオペ状態にあるママたちと共有できる点だと思いますが、1つ1つの育児・家事の大変さではなく、連続性の中で、毎日毎日逃れられない育児・家事をこなしていくことの大変さを知りました。一部に手を付けただけで「育児・家事をやっている」などというのは、正直まったくやってないのと一緒くらい、連続性の大変さとはかけ離れた感覚だと思います。

 ひとり親になってから1か月くらい経ったとき。昨日の夕食のメニューがまったく思い出せない自分にちょっとした絶望感を覚えました。怒涛の日々が続き過ぎて、脳が常に更新し続けて過去の記憶をすぐに消去してしまっているような状況でした。さすがにこの状態を続けていくのは良くないと思い、手帳に夕食のメニューを書き込むように。それからまもなく、SNSで料理関連の投稿をするようになり、記録として保存しておけるようになったことで、気持ちに張り合いが出てきました。

 それでも終わることのない育児・家事へのモチベーションを保つことは大変なことだと痛感しました。黙っているとそのままモチベーションが落ちてしまうのを常に実感します。

 しかし、育児・家事はモチベーションが落ちようとも、とめどなく降ってきます。いやはや、この状態を乗り切るにはどうすべきか?そのモチベーションを保つ方法を自分なりに編み出すしかないという結論に至ります。

 要はテレビゲームと同じです。いろんな面をクリアしていく感覚に似たような意識に持っていくことで乗り切ろうとしました。例えば、夕食も同じ人が買い物しているわけなので、食材が似たり寄ったりになり、食材が同じであるため、何も考えなければ、作る料理も同じか、それに近いものしかできません。そこで、ある決め事をしました。
 それは「同じ夕食は1か月に2度作らない」というものです。自分の中で、唯一この条件を設けることでモチベーションを保つことができました。この決め事があるだけで、食材が同じでも、何かしらの工夫をするようになります。煮たり、オーブンで焼いたり、炒めたり、炒めるにしても、しょうゆベースか、みそベースか、コンソメベースか…、などなど掛け算式にレパートリーが生み出されていきました。自分の引き出しが増えれば、いろんなアイデアが出てきます。ですから、ほぼレシピの本やサイトを見たことがありません。

 これはあくまでも「遊び」です。誰かに命じられてやっているわけではないので、苦しくなったら止めちゃえばいいんです。そんな気持ちでやりつつ、多少波はありますが、モチベーションを維持することができました。

 ただ、これは自分で編み出した方法なので、そのまま真似ることはお勧めしません。そのほかの育児・家事も基本は同じですが、自分で自分の方法を見つけていくことが大事なのだと思います。間違っていることもあるかもしれませんが、それも経験です。

 「大変だけど楽にいく」そんな気持ちが有用です。

 

 こんなふうに考えることで、子どもとの向き合い方にもいい影響があったと思います。自分なりのやり方があるように、子どもにもその子なりのやり方があるということです。
 ついつい「他の子ができていているのになんでできないの!」的な叱り方をしてしまう方も多いと思いますが、子どものやり方を尊重しつつ、たまにアドバイスをするという感じです。子どもの主体的な選択を、親としてどうフォローできるかに軸を置いているので、親として足りない自分を追い詰めることはありませんでした。
 親として意識してきたのは、まずは目の前の生活を大事にしてあげることです。子どもたちは成長しようと日々一生懸命生きています。食事を作ることもそうですが、まずは家を安心できる場所にしてあげることが必要です。それを最優先にしてあげることで、ひとり親として親子共々生き抜くすべを見い出してこられたのだと思います。
(吉田 大樹)
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