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僕はダメな子? 発達障害がある子の子育てと親の心理

5人目は、1人の男の子を育てるシングルマザーMさんが執筆されます。(2・3月の全2回)
 
【Mさんのプロフィール】
埼玉県出身 東京都在住
10年前離婚して1人の男の子を育てるシングルマザー
福祉系情報発信のコンテンツ制作などに従事
しんぐるまざあず・ふぉーらむ所属

 

僕はダメな子? 発達障害がある子の子育てと親の心理

「ママ、僕は他の子と同じようにできない。ダメな子なの?」

 私は、現在11歳になる息子と二人暮らしのシングルマザー。息子が1歳の時に離婚した。冒頭の言葉は、息子が年少のとき、保育園帰りに発したひと言だ。その日以来、息子は保育園に行けなくなった。

 冒頭の場面の1年ほど前、息子は発達障害があると診断されていた。息子の発達の凸凹に悩んだ私が、地域の保健師に相談。そこで紹介された児童発達支援センター(こども発達センター)の児童精神科の医師から、そう診断されたのだった。

 その頃の私は息子の発達障害に向き合えず、自分が息子を育てることの大変さばかりに気を取られていた。
 好奇心旺盛でとてもマイペースな息子は、何かに集中し始めると切り替えができず、スケジュール通りに動けなかった。どこかに出かけたら一瞬目を離したスキに見失い、迷子になった回数は数知れず。不注意や衝動から車道へ飛び出すリスクもあり、移動時は手つなぎが必須。喘息もあった。
 保育園に毎朝スケジュール通りに息子を送り出すことを大偉業に感じたし、子どもの都合で仕事を突然休んだり遅刻したりで謝り続けることがとてもしんどかった。実のところ、発達障害の特性が息子から消えたりしないかなと夢想したこともある。

 話を冒頭に戻すと、息子は「僕はダメな子なの?」と私に聞いたあと、ぼんやりと目がうつろになり、うずくまって小さく震えていた。発達障害は生まれつきの特性だと言われている。生まれつきの特性でありながら、みんなと一緒に同じことができない自分を責め、自分自身をダメな子だと否定しようとしていたのだ。小さな心を痛め、一番困っていたのは息子自身に違いない。
 つらさをわかってやれてなくてごめんね。とにかくやれることをやろう。私はその時ようやく息子の発達障害を受け入れ、前を向いて行動しようと心を決めた。

 息子が過ごしやすい環境を求めて、発達障害に理解のある保育園に転園した。また、児童精神科の医師に息子の体幹の弱さや手先の不器用さを相談し、身体の機能を動かしやすくする作業療法を開始した。すると、次第に息子の表情が生気を取り戻し、精神も安定していった。以前のエネルギーにあふれたよく笑う息子が戻ってきたのだ。

 この経験をきっかけに、いくつかわかったことがある。以下3つにまとめるので、よかったら参考にしてほしい。

(1)支援につながると親の心の支援もしてもらえる
 児童発達支援センターで医師や心理士、作業療法士に息子を診てもらっていた時、毎回親の私の心も楽になっていた。息子のことを相談する中で、私の心も和らぐような声かけをしてくれていたのだ。
 発達障害児の支援は、同時に家族の支援も行うことになっている。子どもへの接し方の他に、公共の支援制度や支援施設も教えてくれるなど、全体的なサポートをしてくれるので、身構えずに相談してほしいなと思う。

(2)発達障害がある子を育てる家族の心理
 私はしばらくの間、息子の発達障害と向き合えなかった自分を責めていた。しかし、発達障害についていろいろと学ぶうちに、障害児を育てる家族の心理には次のような段階を踏む傾向があることを知った。

 ショック → 否認 → 悲しみ・絶望 → 適用(受け入れ) → 再起

 

 息子の発達障害をすぐに受け入れられなかったのは自然な心理だったのだとわかり、心が少し楽になった。いろいろな心理状況になっている親御さんがいると思う。どうかご自分を責めないでほしい。

(3)ひとりじゃない。発達障害児を育てるひとり親の存在
 その後私は、発達障害児の親のコミュニティや、ひとり親のコミュニティに参加してみた。そこでわかったのは、発達障害児を育てるひとり親の方は少なくないということ。同じような境遇の方に出会えて苦労を分かち合えた時、自分だけじゃなかったんだと気が楽になった。同じように頑張っている仲間がいる、それだけで力が湧いてきた。

 

 最後に近況報告を。
 現在11歳になった息子に「他の子と同じようにできない子はダメな子だと思う?」と聞いてみた。息子は「僕は、他の子と同じようにできないコトをダメだとは思わないよ。ダメな子では絶対ないよ」とキッパリと答えた。
 ダメな親だと責めていたあの時の自分に教えてあげたい。息子はちゃんと育っているよと。