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農業委員会だよりNo61

農業委員・農地利用最適化推進委員の視察研修を開催

 令和2年12月4日(金曜日)、農業委員、農地利用最適化推進委員及び事務局職員にて、豊川市長沢地区の「一般社団法人ファーム長沢の里」、豊川市上長山町地内の営農型太陽光発電施設の視察研修を行いました。
 1か所目の長沢地区は三方を山に囲まれた中山間地域ですが、道路や鉄道の交通の便が良く、山間から流れる清流沿いに水田が広がる地帯です。地区の人口は約3000人で、全体の農地は約72ha、うち水田は52ha程度(農振農用地は40ha)、主に減農薬の音羽米を栽培しています。また、専業農家は1戸で兼業農家は約80戸あります。
 長沢地区は、農業を高齢のため辞めていき後継ぎがいない農家が多く、その受け手がいない状況でした。また、専業農家は一軒のみで、この農家が元気なうちに体制を整える必要がありました。そこで、主な自作農家に法人設立の事前説明をしたところ出席者全員から賛同を得られたので、まず平成30年3月に法人設立のスケジュール作成を行いました。そして、高齢化・後継者不足から農地を守る一つの方法として、愛知県農地中間管理機構の「地域まるっと中間管理方式」を利用しました。法人設立は平成30年6月で、この方式を日本で一番最初に導入しました。
 現在、地区の農地33.7haを中間管理機構を介して地権者を構成員とする「一般社団法人ファーム長沢の里」が借り受け、うち6.7haを法人が直接農業経営を行い、残りは自作希望の農家へ特定農作業委託を行っています。農作業は、役員、社員4名により分担を決めて実施しており、農機具や施設は法人では所有せず、役員・社員が所有するものを有償使用しています。主な農産物は、減農薬栽培のコメ(音羽米)、ニンニク(黒ニンニク加工、葉ニンニク)とのことです。また、耕作放棄農地の再生作業も実施しています。
 ファームの監事さんのお話では、「直接経営の農家は多くないが、できる人や農業機械を持っている人にはやってもらい、できなくなったら法人のほうへ依頼するようになっている。」とのことです。また、「地権者の合意形成で特に固執する農家を説得するには、今やらなければ後がないことを説明し、危機感を訴えるのが大事だ。」と話していました。さらに「今後の問題は、若い担い手の確保で、その育成には安定した収入を得られることが必要」など、いろいろと参考になる話をお伺いすることができました。
 2か所目は、営農型太陽光発電施設の視察のため、豊川市上長山町に向かいました。ここも、いわゆる中山間地で、アグリガスコム株式会社が運営する営農型太陽光発電施設が南北に向かって長く立ち並んでいました。現地で、担当者様より施設の概要、設置の経緯などをお伺いしました。
 もとは、土地所有者に販売農家は無く、その多くが不耕作地で、所有者がトラクターで除草管理のみを行っていた状況でした。しかし、高齢化のため継続が難しくなり、地元の地区長より相談があり、事業化の検討を行いました。そこで、豊川市、愛知県との協議を重ね、令和元年5月に許可を受け、農業経営基盤強化促進法の農業経営基盤強化促進事業における利用権設定等促進事業により農地の集約を行い、令和元年11月からブロッコリーの栽培を始め、今年が2期目とのことでした。また、夏にはナスを栽培するとのことです。
 現在、ブロッコリーを栽培中で、架台として、高さ約2.7 mほどの支柱が約4.m間隔で立ち並び、その上部にソーラーパネルが水平に設置されていました。しかし、上部のソーラーパネルは全面張りではなく、太陽の光を下部のブロッコリーに取り入れるため、隙間が空けて設置されていました。パネルが水平に置かれた目的は、「傾斜をつけて一方に雨水が流れるよりも、水平にして雨水が四方に流れ落ちるほうが良いのか、どちらが農地への影響が少ないか試験してみたかった。」とのことです。労働力は、3名の社員のほかアルバイト、就労支援で近くの福祉施設から手伝いに来てもらっています。ほかに近くで、約1.5haのブロッコリーの露地栽培も行っているとのことでした。
 ソーラーシェアリング導入のメリットは、「作物の販売収入に加え、売電による継続的な収入等による農業経営のさらなる改善が適うところです。また、小規模でも、兼業農家、自給的農家や定年帰農者といった農村のコミュ二ティーを維持する人々の収入安定に寄与するものと考えている。」とのことでした。デメリットは、「架台の設置が営農の邪魔になること。日射がさえぎられるため生育が遅れることで農業自体の生産性は落ちるので、生産性向上のためアイデアを考案中」とのことでした。実際に現場を見ながら、いろいろ質問に答えていただきました。
 最後に、今回の豊川市の事例を参考に、今後の農地集積のあり方や営農型太陽光発電に係る課題解決に活かして参りたいと考えております。

 令和2年12月 農業委員 河根規雄